発達障害の一人暮らしはサバイバル
大学生の次女は発達障害(ADHD)の診断を受けています。そんな彼女の暮らしぶりとは・・・
ADHDの特性
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性の3つの症状を主な特徴とする生まれつきの神経発達症です。最近は耳にすることが多くなり一度は聞いたことのある疾患でないでしょうか。
次女の場合、不注意優勢型で
- 忘れ物やなくし物が多い
- 約束などを忘れてしまう
- 興味のないことは全く頭に入ってこない
- 順序だてて考えたりやることができない
- 整理整頓ができない
- 口頭での説明が入ってこない
の特性が強く、傍からみていると感じませんが本人曰く授業中じっとしているのが困難とのことです。これに関してはかなり我慢しているのでしょうか、今まで学校などで指摘されたことは一度もありません。
一人暮らしで準備したもの
不注意の特性が強い彼女。大学進学を機に物理的に一人暮らしが必須となってしまいました。
これまで自宅で生活していた時は、身の回りのことをサポートしてやっと生活できていたのに一人暮らしなんて!!一番心配したのは「なくし物」です。
物に対しての認知機能が極端に低いので、手にしたものは用が済んだら野に放たれます。そうして今まで教科書、制服のジャケット、シューズ・・・など到底「それ無くす??」と思うものまで無くなります。毎朝「おかーさーん!!プリントがない!!」挙句の果てには「おかーさーん!!リュックが無い!!!!」と通学用のリュックまで行方不明になったりと毎朝大騒ぎをして学校へ行くのが日課でした。
「部屋の鍵を無くしたら?」
「財布を無くしたら?」
本人は、無くしたらどうしようということに興味がないので全く関心をもちません。
心配で不安な私は対策を考えたところ
AirTagというものにたどり着きました。
AirTagとは、Appleが発売している紛失防止タグです。位置情報を追跡したり、音を鳴らしたりすることができます。
- 部屋の鍵
- 自転車の鍵
- 財布
- Suica
に取り付けました。お財布は時々部屋の中でどこだろう?と音を鳴らして見つけているものの、今のところ外で置き忘れた!ということはないようです。というのもその他のものは、玄関ドアの内側にフックを付け、そこにかけるルールにしたからです。それだけは習慣づけることによって無くすリスクが軽減されました。
部屋にどろぼうが?!
ADHDの特性のひとつである片付けが苦手なのも一人暮らしにとってはとても重要な問題です。ある日彼女の部屋を訪れると・・・
家具は定位置から動き、着用済みと思われる洋服、食べた物のゴミ、ケチャップや粉?が床やカーテンにまき散らされ、姿見が倒れ割れた鏡の破片が床いっぱいに広がっているではありませんか!!
部屋に泥棒が入り格闘した??と思わせるほど、そこは凄惨な事件現場でした。
事件を推理してみると・・・
探し物をしてベッドや本棚を動かし、洋服を脱いだら洋服の役目は終わりを迎え、食事をしたらお腹は満たされ目的が果たされたので食事の行為はそこで終了、化粧をしたらパウダーの容器を落としてしまったが化粧をすることにしか目が向かず、自分がより盛れる向きを探し姿見を移動し、見ることだけにとらわれ不安定な場所へ置き倒れ鏡が大破、ここまでくるとどうやって片付けたらよいか分からなくなり放置。
使ったものを元に戻せばいいだけじゃないと思うでしょうが、使ったら途端に興味を失い、手から離れてしまうのです。そして使ったものがあちこちに散乱して気が付いたら床が物で溢れかえり、片付けようにもどこをどうすればいいのか分からなくなるようです。
一人暮らしを始めるとき、あれもあった方が、これもあった方が便利なんじゃないかと色々揃えましたが、物があればそれだけ必要な物が目に入らなくなり片付ける手間も増えます。
今では
- 必要最低限のものを
- 見えるように
- 使うものはシンプルに
を最優先に考えて家具や物を揃えています。
よく、引き出しに物の名前を貼っておくと片付けの対策になると本やインターネットにアドバイスが書いてありますが、彼女の場合は貼ってある通りに入れることは難しく、例えば「ここにハサミって書いてあるけどないよ」ということになるのでやっていません。
また目に入らないものは「無い」ととらえることに加え、そもそも目に入りにくいのです。これは興味があるもの以外は目に映っても認識しないのだと思います。なるべく見えやすい位置に多くの情報が入らないように置くのがポイントです。
例えば洗濯用の洗剤です。これは洗剤と柔軟剤が一緒になったものをひとつだけにしました。洗剤・柔軟剤・漂白剤・おしゃれ着用洗剤と揃えても、どの洋服に・どの洗剤で・どのくらいの量を使い・どのコースで洗濯するのかが複雑になって洗濯という行為が困難になってしまうのです。ですので洋服もなるべく皺にならず色移りしないものを選びます。
間に合わない!
ADHDの彼女は時間の管理も苦手です。時間の感覚が乏しいうえに先の予測ができないので、いつも予定の時間にギリギリになってしまいます。ギリギリどころか遅れることもしばしばあります。一人暮らしの彼女にとって予定の授業に遅れないように行くというのも大きな課題のひとつです。
自宅にいた頃は学校へ車で送迎をしていました。私の通勤途中で学校に寄って降ろす生活でしたので、毎日早く早くと急かし、おじいちゃんは車庫のドアをあけ、おばあちゃんは荷物を持ち、私は朝食を持って、乗った瞬間に車を発車。信号にかからない裏道を抜け、彼女の登校時間も私の出勤時間もギリギリです。車の中に朝食を持ち込み、時には車の中で着替え、またある日は間に合わない課題を不安定な車の中で書いている。乗車時間はわずか10分ほどなので、車の時計の1分1秒とにらめっこをしながら、爆発タイマーが仕掛けられたジェットコースターを運転しているような、そんな毎日でした。
そんな彼女が、ひとりで起きて身の回りのことを全て自分でこなし、決まった時間に発車する電車に乗り学校へ行かなければなりません。
物理的な解決法としては、学校の目の前の住まいを探し選択するのもひとつの方法だと思いますが、世界が学校と家だけになり視野が狭くなると引きこもってしまう可能性もあるので、駅の目の前のアパートに住むことにしました。徒歩1分なので支度ができたらすぐに乗れます。
乗る予定の電車の時間を書いて玄関に貼りました。余裕をもって予定の2本前の電車の時間です。
貼っているときからわかっていました。これは早めの時間だから2本遅くても大丈夫と思ってギリギリの時間で支度することを…(笑)
いつもギリギリか遅刻をしている…もしくは間に合わないと諦めて欠席することもあるようですが、なんとか単位はとれているようです。
このなんとか単位を…というのは次回お話したいと思います。
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