ADHDの大学生 単位取得への道
ADHD(注意欠如多動症)の大きな特性のひとつとして「先延ばし」癖があります。これは興味のないことに取り組むことが困難なうえ、目先の興味に飛びついてしまうためです。そのうち、やらなければならないことは記憶の彼方に飛んでいき、当日になって慌てふためく…もうそれはADHDのルーティーンと言ってもいいでしょう。そんな彼女がどうやって課題を提出し、単位を取得できたのでしょうか。
ADHDの学力は?
ADHDだからといって学力が低いとは限りません。娘はADHDの特性はあるものの学力はある方だと思います。中学受験を経て地域では1番偏差値の高い高校へ通っていました。とはいえ小学校、中学校までは成績が良かったのですが、高校へ行くと成績はがた落ち…。これは単純に理解力が落ちたということではありません。高校では科目がぐっと増え、授業のスピードもかなり速く、聞き取りながら板書をノートにとり、問題を解いていくというマルチタスクをこなすことが要求されます。ADHDの人はそのマルチタスクをこなすことが非常に困難です。彼女は特に耳からの情報が取得しにくい特性もあり、授業についていくことが難しくなってしまいました。また、選択科目も増え、予定を把握するのが困難なので、移動教室には苦労したようです。どこに何を持っていったらいいのか分からず教室間をさまようこともあったそうです。
頼ってもいい!ひとりで悩まない
ADHDの特性があるお子様を持つ多くの親御さんが、大学に行って授業についていけるかしら…課題を提出することができるかしら…そもそも自分で授業を計画的に選択することができるのかしら?と、もしかしたら子どもより不安になっているかもしれません。実は私もそうでした。まだADHDと診断されていない頃、確信はあっても怖くて受診できない頃、将来大学生になったら、どうやって大学に通えばいいんだろう。大学には行けないかも…と、ひとり悩んでいました。それがあるきっかけで地域の障害支援センターへ電話で相談をしたことで
ほとんどの大学で発達障害をもった学生の支援を行っている
ということを知りました。中にはお金の管理をしてくれるところもあるし、大学に通っている発達障がいのお子さんはたくさんいますよ。と教えてくださいました。
その後インターネットで調べたところ、診断書がなくても支援を行っている大学がたくさんあることを知り、少し不安が和らいだのを覚えています。
入学が決まったらまずやるべきこと
大学受験が終わり、進学が決まった大学から書類が送られてきました。その中に障がい支援の相談窓口の記載を見つけ早速電話をしました。電話で応対してくれた方はとても丁寧で穏やかな口調だったので安心できました。簡単に事情を説明し、入学前に本人と私と面談をすることになりました。
面談当日、遠方で何度も行ったり来たりできないため、引っ越しの合間に大学へ行くことにしました。受付を済ませエントランスで待っていると、おそらく電話で対応してくださった優しそうな女性の方が現れ案内をしてくれました。私と娘がついて行って案内された部屋に入ると…そこは30人ほどで会議ができるようなだだっ広い会議室にコの字型に配置された長テーブル、一番奥にはいかにも「教授」という風貌の男性とその隣にこれまた風格のある女性が鎮座しており、その右手には先生風の女性、そしてその隣に案内してくれた事務課の女性、その隣にはおそらく記録をとるためにパソコンを準備している男性がいました。私は保健室のような部屋で電話で対応してくださった事務課の方とお話をするものだと勝手に想像していたので、部屋に入ったとたん、引っ越しで作業するためジーンズ姿の自分が場違いな所に来てしまった…と一瞬たじろいでしまいました。しかし、ここまで真剣に受け止めてくださる大学の姿勢に感激をしました。
厳かな雰囲気で始まった面談ですが、終始穏やかに娘のADHDであるがゆえの苦労を一つ一つ共感しながら聞いてくれ寄り添ってくれて面談が終わったころには私の心は晴れやかでした。娘はどこまで考えているのかわかりませんでしたが、というのもここまで娘から「心配」という言葉を一度も聞いていなかったように思います。先の見通しをたてるのが困難なのでこれから起こりうる心配事を想像できなかったのかもしれません。
この日相談したことを元に支援の具体的な内容を大学が決め、本人が承認した後支援がスタートします。支援がスタートするまでおよそ1ヶ月~1ヶ月半ほどでした。
大学での支援の内容とは
所定の手続きを経て支援の内容が決まると、関係各所へ障がい学生支援課から「配慮依頼」の文書が通知されます。
娘の障がいの状況や修学環境の調整の内容が記載されたものです。
具体的には、特性(不注意)に対して指摘したり理解が不十分な対応をとらないように質問しやすい環境調整の依頼や、提出期限の延長措置等です。
個人の特性により支援の内容は様々だと思いますが、これまでこの支援には大変お世話になりました。
もしこれから大学進学を控えている方や、現在修学中で困難を抱えていて悩んでいる方がいたら絶対に支援の相談をすることをおすすめします。これは必須です。必ず助けてもらえるので、勇気を出して相談してみてください。
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